ACE阻害薬のこれまで

初のACE阻害薬はカプトプリルから始まり、カプトプリルには高血圧に対して使われ、血管拡張作用や腎保護作用があるとされています。

 

副作用に空咳(からせき)がありますが、これを逆手に取って誤嚥(ごえん)性肺炎にもACE阻害薬が用いられています。

 

カプトプリルは体に残る時間(血中半減期)が短く、1日2回〜3回飲む必要があるため、使用感はあまりよくありませんでした。

 

これらの使用感、副作用を改善するために、数々の新たなACE阻害薬が生まれています。

ACE阻害薬の降圧効果・強さ比較

ACE阻害薬は過去に比較試験も行われていますが、血圧を下げる効果(降圧効果)には大きな差がないことが報告されています。

 

降圧効果に大きな違いがない一方で、対応する病状(適応症)、効果がどれだけ続くか(持続性)に基づいて使い分けをすることがあります。

 

今回はACE阻害薬の中でもよく使われる

・イミダプリル(タナトリル)

・エナラプリル(レニベース)

・ペリンドプリル(コバシル)

の違いを比較しながら紹介していきます。

イミダプリル,エナラプリル,ペリンドプリルの違い

一般名イミダプリルエナラプリルペリンドプリル
先発医薬品タナトリルレニベースコバシル
先発メーカー田辺三菱工業MSD協和発酵キリン
適応症高血圧症
腎実質性高血圧症
Ⅰ型糖尿病に伴う
糖尿病性腎症
高血圧症
軽症〜中等症の
慢性腎不全
高血圧症

いずれのACE阻害薬も高血圧症の降圧効果を期待して使用され、いずれも後発医薬品が出ており、トーワ、日医工、サワイなどから数々のジェネリック医薬品が販売されています。

 

ACE阻害薬の元祖カプトプリルに比べ、1日1回の服用で良いので患者さんのQOL(生活の質)向上になっています。

 

イミダプリル(タナトリル)は高血圧以外に「I型糖尿病に伴う糖尿病性腎症」も効果・効能として記載されています。

 

エナラプリル(レニベース)は「軽症〜中等症の慢性腎不全」にも保険の適用があります。また、ジギタリス製剤、利尿剤などの基礎治療剤では効果が出ていない場合に併用して使われます。

 

ペリンドプリル(コバシル)はACE阻害薬の中でも特に効果が安定して長続きするため、1日中安定した降圧効果が期待できます。

トラフピーク(T/P)比で比較

降圧薬を飲んで

次の降圧薬を飲む直前の薬の効果が切れている時の血圧が下がった時の値(降圧値)をトラフ値

もっとも薬が効き血圧が下がった時の値をピーク値と呼びます。

 

このトラフ値をピーク値で割った比率「トラフ・ピーク(T/P)比」が100%に近いほど降圧効果が血圧が変わらず安定しており、トラフ・ピーク比が小さいほど血圧の変動が大きくリスクが高まります。

トラフ・ピーク比は50%以上が米国食品医薬品局(FDA)で推奨されています。

 

イミダプリルとエナラプリルはその50%以上をおおよそクリアするくらいの数値です。

一方、ペリンドプリルのみトラフ・ピーク比が「75~100%」と1つ頭抜けて高くなっています。つまり、ペリンドプリル(コバシル)がもっとも安定して長続きすることが分かります。

ACE阻害薬とARBの比較・併用

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の副作用である「空咳」のために飲み続けられない場合、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)が使われることがあります。

 

ACE阻害薬とARBを併用するというケースは原則見られません。

それぞれ作用機序は異なりますが、どちらも最終的にはアンジオテンシンの受容体への結合阻害になることを考えると、リスクが高いのは推測できます。

 

高血圧治療薬の第一選択薬として、「ACE阻害薬またはARB」と並ぶこともあります。値段はACE阻害薬の方が安く、副作用が強く出ない限り、ACE阻害薬で十分な降圧効果が得られます。

 

臨床現場ではARBが用いられていることも多く、この背景には製薬メーカーも大きく関わっています。ARBの方が高価であり、製薬企業側はARBの方を使いたがってもらい、お医者さんにもよく推奨します。

 

ただし、患者さんと病院の立場からすれば、降圧効果がきちんと見られるACE阻害薬を使っても何も問題ないどころか、コスト的にはACE阻害薬の方が優れています。

 

また、空咳は夕食後投与にすることで症状を緩和することもできます。さらに、ARBでも空咳の副作用の報告が出ているので、ARBにスイッチしたとしても注意は必要です、

 

薬剤単体だけでなく、ACE阻害薬やARBは「利尿薬」や「NSAIDs」との併用で腎障害を生じる例が報告されているので、こちらも注意が必要です。